河鍋暁斎展&桃山展

2ヶ月ほど前に大津絵展を一人で見に行き、大津絵ファンの母に「図録を買ってくれ」と言われていたので1冊買っておいた。それをたまに眺めて楽しんでいたのだが、先週末に母と話したところ、「図録を買っておいてくれ、というのは「母の手元に置く1冊が欲しい」」という意味だったということが判明。私も自分の行った(そして気に入った)展覧会の図録は買って手元に置いておきたいタイプだし、母の性格上、確実にこれから毎日1回は「大津絵の図録…」と言われるし [1]「ボケたら1日3回だよ」By母、そりゃかなわんので調べたところ、まだ美術館には在庫がありそうだったから、すわ!と今やっている河鍋暁斎展に行ってきた。今回は母も一緒。

この河鍋暁斎展、コロナ禍もあり、元々企画として出てはいたが急遽実施が決まった「下絵」や「スケッチ」ばかり集めたものである。我らの内情としては大津絵の図録のおまけ気分だったのだが、これがなかなか面白い!河鍋暁斎は幕末〜明治期の画家で、狩野派の元で修行。「枯木寒鴉図」は当時百円で購入されたり、その場で注文を受けて素早く書く書画会でも人気者で、富裕層に好まれていた。そのせいで絵日記はまとまって残っていない。 [2]欲しがる人が多かったらしい。果てはお雇い外国人ジョサイア・コンドルも弟子入りするわ、一緒に日光に写生の旅へ出るわ、交友関係もなかなか広く、また弟子には乞われると絵見本を描いてあげたり、多分結構楽しい人だったのかもしれない。伝記を読んだことがないので、実際のところはわからないけれど。錦絵や滑稽本や教科書の挿絵、団扇のデザインなんかもしているので、大衆にも知名度があったのだろう。娘が父親の絵のフォローをするのなんかは北斎に通じるものがありますな。

で、肝心の絵について。下絵なのでまず、墨で人体(裸)であたりをつけた上に、朱で着物を描いていたり、骨格を意識したり、踊る男女のポージングを練習してたり、気に入らない部分には半紙を貼り付けて描き直したり。母は純粋に感心してたのだが、私は「これ…コミスタ…」という考えが頭の中を何度も駆け巡った。「これ、レイヤーじゃん」「これ、デッサン練習じゃん…」書画会についても、「これ、スケブ…」って頭をよぎる。絵を描くというのは、今も昔も変わらないんだなぁ…という意味で、なかなか面白い展覧会でした。

その後、私は続けて桃山展へ。こちらは明日までだったのでついでに見てきました。見所がありすぎて、かえって語れない。本の中でしか見たことのない、有名な絵や屏風の本物がバンバンと怒涛の勢いで展示されていて、「あ!これチャレンジでやった」ならぬ「あ!これ教科書載ってた!」って感じ。大きなものも多かったので、近寄ってみたり遠のいてみたり。時間が遅かったせいか、意外と混んでおらず、それもあって満足度は非常に高い。強いて言えばお茶碗の飾る台が高いので、内側が全部見えなかったことくらい。もうちょっと低めの台にしてくれればいいのに…

と、こんな感じで今日の美術館巡りを終えたのでした。来年以降、コロナの影響でますます国内所蔵品が出回るんじゃないかな、と予想。今回の河鍋暁斎展みたいに、面白い切り口のがあれば、また是非行きたいと思う。

References

References
1 「ボケたら1日3回だよ」By母
2 欲しがる人が多かったらしい。

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