佐藤優の部屋

 

別のそこまで佐藤優好きという訳ではないのですが無駄?に沢山読んでいて、実際繰り返して読む本も多いため、しっかりご紹介するページを作成しました。徐々に増やします&何度も編集する可能性が高いです。お勧め度は5点満点で採点してます。

 

■私の主観による読む価値のある佐藤優の本■

 

1 自壊する帝国

2 私のマルクス

3 国家論 日本社会をどう強化するか

4 読書の技法

 

 

■自壊する帝国

出版社:新潮社
ページ数:603ページ
お勧め度:★★★★★

佐藤優の本に特徴的な長い引用が少なく、思想・主義的な記述も少ないため、佐藤優初心者向けの本といえる。ただし、ソ連崩壊前後のロシアや東欧の政治や政治家についての記述が多く、登場人物も相当な数のため、そういった意味では歴史的知識を多少なりとも身につけていないと辛い本かもしれない。まぁ、あの時代の記憶がはっきりある人ならば問題あるまい…

前半はリガ出身のサーシャを中心としたロシア知識人との交流、後半はソ連崩壊について語られているが、個人的に面白いのはやっぱり前半。「ロシアのインテリゲンチャ、半端ねぇ…」と何度読んでも驚嘆してしまう。

ところで、本書の利用方法として、ソ連崩壊史について学ぶ、ロシア知識人の勉強方法や思考回路に触れる、外交官の仕事ぶりについて知る、だけではなく、「ロシア観光手引き」としても使えることを強く推したい。実際、2012年にロシア旅行したときに、地球の歩き方よりも、この本の方がお土産や食べ物、ロシア流一気飲みのやり方などの参考になった。ロシアへの観光者はまだまだ少ない。ろくなガイド本も無いので、飛行機の中の友代わりに、一冊いかがだろうか。意図的か否かは知らないが、ロシア人の内在的論理(←佐藤優お得意の『内在的論理』である)や風俗が掴みやすいよう、分かり易く書いてあるので、旅行前の一読を強くお勧めする。

 

■私のマルクス

出版社:文藝春秋
ページ数:328ページ
お勧め度:★★★★

佐藤優高校生〜大学院生の頃の自伝。日本であまりお見かけしない神学部学生の生態を知るにはちょうどいいのかもしれないが、なんせ佐藤優である。学生運動に関する話の方が割合としては多い気がする。という訳で、本書を一言でまとめると「学生運動してる神学部生の話」とかなりニッチ路線なのだ。同じ時期を扱った本も出ているが、こちらの方を先に読んだこともあり、個人的な思い入れは強い。

更に個人的な嗜好の話となるが、私は学生運動についてそんなに関心が無いため、正直なところどーでも良く、「単なる自伝」として読んでいるが、神学部の先生方とのやり取りやそこで取り上げられた本には興味津々。そのために何度も読んでいる。名前があがっていた本を一冊読んでは、この本に戻り、また別の本を読んで…の繰り返し。私自身が大学時代に戻りたがっているのかもしれない。

「自壊する帝国」がロシアガイド本ならば、こちらはブックガイドか。何れにしても、学生運動の大まかなイメージを持っていないと、民青とか社青同とかいわれても、ちとキツいことは間違いない。よって星は4つ。

 

■情報力 情報戦を勝ち抜く”知の技法”

出版社:イースト・プレス
ページ数:267ページ
お勧め度:★★

「情報力」「知の技法」といったタイトルに騙され易い本。佐藤優の本には「タイトル詐欺」なものが多い。編集者は一体何をしているのだ?私がタイトルをつけるならば「北朝鮮問題をインテリジェンスの世界から読み解く」になるだろう。

内容としては佐藤優の本に多い対談式で、いつもの如く佐藤優が相手のことを褒めまくり喋らせている。この辺の技が情報屋らしいといえばらしく、我々の日常生活にも使えそうと言えば使えそうである。今回の対談者は毎日新聞の北朝鮮ウォッチャー鈴木琢磨氏。北朝鮮について(というか金正日について)の考察は、我々の先入観から随分離れた姿を提供してくれるため、結構面白い。さすが平壌を自転車で走り回った人は違う…

一応「知の技法」っぽいことも後半に書いてあるが、そんなに大したこと無い、というか正直なところ、前半の北朝鮮話で盛り上がりすぎて「そうそう、今回の企画は「情報力」だから!「知の技法」だからっ!それっぽいことも話しておかなきゃ!」といった感じで非常に付け足し感が強い。それならいっそ、最初から最後まで北朝鮮の政情や後継者問題(本が出版された当時はまだ決まってなかった)、平壌市民や田舎の暮らしなどについて、語り合ってくれた方がずっと面白かったのに…と残念に思う。

 

■私の「情報分析術」超入門 仕事に効く世界の捉え方

出版社:徳間書店
ページ数:234ページ
お勧め度:★

こちらもタイトル詐欺本。情報分析「術」については、最初の5分の1くらいしかなく、残りは全て雑誌等で佐藤優が「情報分析した結果」の再掲である。しかも、情報分析術についても、あくまで国際情報の分析であって、決して副題の通り「仕事に効」かないのである。「効かない」というよりは、きちんと橋渡ししていない。なので、その断絶を自力で飛び越えられる(頭の良い)人にしか、全くためにならないだろう・・・

本書のほとんどを占める「実践編」は先述した通り、過去に雑誌等に出ていた記事の再掲をまとめたもの。しかも、政治家や官僚に対する喧嘩を売りまくりである。よってますます「情報分析術」本としての価値は下がる。「喧嘩術」であれば、星はもう一つ増えただろう。

多作なのでしょうがない・・・と雑誌記事の再掲は良いにしても、佐藤優の編集者はもう少しタイトルをきちんとしたほうが良いという良いお手本本でした。

 

■危機を覆す情報分析〜知の実践講義「インテリジェンスとは何か」〜

出版社:角川書店
ページ数:214ページ
お勧め度:★★

朝日カルチャーセンターでの講義をまとめたもので、佐藤優の本にしては珍しく脱線が少ない。とは言え、4章のうち、2番目にあたる「スパイとは何か」で、延々と資本主義について引用が続くのは、いつもの通りというべきか。まぁ、スパイ→国家→国家としての力→資本主義と国家との関係性、という流れはわかるんだけどね。とは言え、本当に珍しいほどに脱線が少なく、3章、4章の勉強や教養についての部分は本当にそのことについてのみだった。

だが、佐藤優の他の本を読んでいるならば、中身が重複していることはお察しである。「それってブレてないってことよね」と鷹揚な精神が必要だ。また、鷹揚に構えることができないお財布の持ち主は、最初は図書館で借りたほうが良い。で、中身を新鮮に感じ、気に入れば改めて買えばいいのだ。

 

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