二・二六事件の青年将校はそんなに「ふざけた感じのスッカスカ」?
またもやこの本のことなんですが、二・二六事件の青年将校について「ふざけた感じのスカスカな連中」とボロクソに罵ってたんですね。たまたま8月に半藤一利の「昭和史」を読んで、そこからの流れで松本清張の「二・二六事件 1巻」を読み終わったところでこの本を読んで違和感を感じたので、「すわ、(私の中の)流れは二・二六事件!」と引き続き、関連本を読んでいるところです。
佐藤優が「現代の地政学」で取り上げていた「特高 二・二六事件秘史」も読んだし、青年将校側だった「生きている二・二六」とか、遺族(青年将校の兄)の本「二・二六事件秘話」、この辺は読了。いまは中立というか学問的な見解の「二・二六事件全検証」を、読み進めています。このあとは三島由紀夫とか、だいぶ前に読んだけど再読予定の渡辺京二の「北一輝」とかも読む予定。で、やっぱり思う。「そんなにふざけた感じのスッカスカな連中か?」
まず「特高 二・二六事件秘史」。これは岡田首相救出や、二・二六事件の前段として捉えられている相沢事件の取り調べについて、特高(憲兵)の担当者の手記であり、青年将校側について特段掘り下げているわけではない。青年将校側の関係者本については、悪く書くわけないよねということで、おいておくにしても、中立っぽい「二・二六事件全検証」を読み進めていても「ふざけた感じ」はないのである。
まぁ、ぶっちゃけ、計画がガバガバだったのは間違いないと思う。「日本の状況を憂う」のはわかる、「今までの要人を個人単位で襲撃するのでは意味がない」というのも五・一五事件や血盟団事件などの結果を踏まえれば、極端だけど、まぁわからんでもない。ただ、「自分たちは兵を挙げて意見表明する。その後、シンパな偉い人たちがやってくれる。あと天皇陛下もわかってくれる。」という部分が甘すぎた。天皇陛下はわかって下さらなかったし、シンパな偉い人たちは及び腰だった。どえらいことをやろうとした割に最後が他力本願だったのが非常にいけていない。要は国を運用するということを考慮する能力や実力がなかった。これは言い切ってもいいと思う。ついでに言うと、青年将校グループの中でも連携が取れていなかったりと、運用面でもトホホな部分は多かった・・・
とはいえ、佐藤優氏の「二・二六事件は茶番」で、青年将校は「ふざけた感じでスカスカ」という言い方は言い過ぎなように感じる。あの事件を「あいつら、ふざけた奴らだったから」と切り捨てては、今後、二・二六と似たな事件を防げないのではないか?昭和の青年将校と同じように、(思想や哲学的にはガバガバでも、というかガバガバだからこそ)純粋な気持ちだけで「今の日本をどうにかしなくては!」と思い立ち、暴力的な手段を用いるも、「その後」を考えられない人間が出てくる可能性、大いにあると思うんだけどな。過去については「あいつらダメだから」で済ませられるが、それで済ませては今にいきまい。
ちなみに、ガバガバだったのは憲兵側も同じである。もともと要注意人物としてマークされていた青年将校や民間人をずっと張っていて、陸軍高官も「いつかあいつらやるだろう」という空気を感じていたにも関わらず、結果事件は起こったのである。狼少年の話じゃないが、これもまた教訓的じゃありませんか。