ミアシャイマー講演会で考えた事

本日は水曜日ながら公休日な私。ナイスタイミングなことにミアシャイマー教授の講演会が東京で開催される(しかもシンポジウムではなく、ミアシャイマー教授が主役)との情報をキャッチしていたので「ヒャッホーイ」と出かけて行ったわけです。普段こんな寒い日は絶対に家から出ないのにね。で、講演会後は会場で一緒になった知人というか飲み仲間?とご飯食べて、ユニクロで私の冬の制服、黒のタートルネック [1]ヒートテック分もカウントすると計5枚。あれです、サイボーグ004リスペクトです。やらフリースを買い込み、そのまま本屋になだれ込んで、「おっ!有元葉子のおせち本が出てるじゃーん [2] … Continue reading」とか「エクスタシーの神学?なんかダヴィンチコードにもそんな話があったわね」とか「佐藤優また手嶋さんと対談してんの?」とかブツブツ言いながら、最終的にこれらの本と、おしゃれ本 [3]「フランス人は服を10着しか持たない」って本と「モサド・ファイル」を買いました。モサドもね、気になるもんね。

さて、私の買った本は多分ほとんどの人にとってどうでもいいので、ここから本題。ミアシャイマー教授が喋ったことの記録ではなく、あくまで私によるピックアップと考えた事なので、その辺はご了承ください。今回の参加者の三分の一が学生だったとのことなので、きっと意識高い系か超真面目系学生君がちゃんとまとめてくれていると思う。そもそも、見栄はって [4]アメリカの大学でinternational relationsで学位とって、卒論書いた見栄。6年近く前に取った杵柄です。同時通訳用の機械付けずに講演聞いてたもんだから、ちゃんと理解していないところもあるかもしれない。

まず、講演が始まって最初に思ったのが、ミアシャイマー教授、見かけに比べて意外とパワフルスピーカーだな・・・ということ。徐々に熱が帯びてくるのではなく、最初からアツい。でも英語は聞き取りやすかったです。講演の筋立てとしては1)中国の台頭について 2)ウクライナ問題について 3)その2つの関係と影響について、という3本立てで、中国の台頭部分については、教授の持論である攻撃的現実主義の定義や解説を交えつつ話していらっしゃいました。多分、ここが一般的に一番興味深い部分なんでしょうけど、個人的にはその昔、自分の卒論書くときにミアシャイマー教授の理論を援用してたこともあり [5] … Continue reading、特に目新しいこともなく、全く印象に残ってないです・・・すみません。私の講演中のメモは「アメリカの地域覇権を脅かしたのは、過去、ドイツ帝国、大日本帝国、ナチスドイツ、ソ連のみ。」だけでした。 [6] … Continue reading

で、次の話題はウクライナ問題。ミアシャイマー教授によれば、この危機はロシア(プーチン)ではなく、NATOやEUを東方拡大し続けた西側に問題があるとのこと。ナポレオンの遠征→独ソ戦前の協定(ポーランド分割とか)→バルバロッサ作戦→冷戦による東欧共産主義国化って流れをちょっとでも考えれば、これ以上西側の息がウクライナにかかることをロシアが許せないことは自明なんですけどね。その点をロシアの論理ではなく、西側の論理で眺めるから「クリミアを併合したロシア許すまじ」になるわけで、ロシア視点で物事を見ようとするならば「まー、そうだよね。そりゃ、西の国が過去2度も戦争しかけてきているんだし、冷戦もあったし、3度目は嫌だよねぇ・・・」くらいの同情の余地はある。ま、ミアシャイマー教授にかかれば、内在的論理とか歴史観とかではなく、「大国は生き残るのを目的として行動する。NATOの東方拡大はロシアの生き残りにとって「恐怖」である。故に・・・」となるんですけど。

さて、ここで中国とウクライナを紐付けるのは何かと言えば、我らが超大国アメリカ様です。前まではアメリカにとっての優先順には「1ヨーロッパ 2中東 3アジア」だったのに、中国の台頭のせいでここ最近はアジアが1番だった。がっ!今回のウクライナ問題で、またヨーロッパが一番に返り咲いてしまった。しかも、ISIS [7]今は単にISっていうことが多いようですけど。ミアシャイマー教授は「アイシス」と言っていたので、この記事ではこの表記で。の問題にも首を突っ込み始めたので中東も優先順位が上がっている・・・とのこと。このような状況下、アメリカがヨーロッパや中東に注力している中で、中国の台頭に立ち向かうには、日本の核武装もありうるだろうととのこと。ちなみに、日本人が国際政治や核について、相当リベラルだと意識しているのか(というかここ数日の来日で身にしみたのか??)、ミアシャイマー教授、日本の核武装化については、結構歯切れが悪い感じで大人しめに語ってました。中国人はリアリストだから話しやすいらしいけど。ドイツでも話しにくいらしい・・・

講演内容については、だいたいこんな感じ。今回ミアシャイマー教授の講演を聞いて、そしてちょうど佐藤優の最近の対談集を続けて読んでいることもあり、私が考えたのが、ロシアの重要性。ぶっちゃけ、中国も中東もロシアをどれくらい上手く巻き込めるかがすべてなのではないか?教授も「ロシアは中国の封じ込め、イラン問題、シリア問題、アフガン問題で重要な役割を演じている」とおっしゃっていたけれども、教授の大国理論から離れて考えてみても、ロシアは帝政ロシアやソ連時代にコーカサスや中央アジアを抱えていた分、アメリカよりもずっとイスラムに関わる問題には精通しているわけです。地理的にも中東に近いし。ウクライナ問題に対して、ロシアは大国として反応しただけだけど、それはそれとして、イスラムに関わる問題については、大国同士協力しあえるわけだし [8]攻撃的現実主義の理論からしても、ロシアもアメリカも中東に新しい「大国」はいらないですからね。、実務的にもこの分野での先輩を頼らないのはもったいない。同時に、対中国に対しても、ロシアは建国前から関わってきているので、知見はそれなりにあるだろうし、何より、封じ込めるには地理的にも国境を接しているロシアの協力が不可欠なわけです。今回の講演でミアシャイマー教授曰く、そして、ついでに読んだ本の中で佐藤優からも「オバマの外交はクソだ [9]とまでは言われてない。でもダメダメ認定されていることは間違いない」と言われるオバマ大統領、まずはロシアとある程度仲良くすることが直近の課題と言えそうです。ま、できなさそうだけどね。講演の中で「安倍さんはプーチンとうまくやっているよね。彼がすべきなのは、オバマに電話して『ロシアと仲良くして!』ってお願いすることだよ」と笑いを取ってましたよ。

最後に何点か。質疑応答で「もし自分が国務長官ならば?」と訊かれた教授曰く「まず、ISISへの関与を止めて、この問題はその地域の国に任せる。そしてウクライナを中立 化する」とのことでした。そして、経済交流による紛争抑止については「全く意味なし。第一次大戦前も第二次大戦前も経済交流はあったのに、大戦は起こった。だいたい、敵対する国家で経済交流なかったのって、冷戦中だけだし」とのこと。なので、「中国と日本やアメリカとの経済交流は安全保障上の問題を解決しない」ということでした。個人的には大国の凋落はどのように起こるのか、本に書いてあったような気がしなくもないけど、思い出せず、今まさに悶々としているところ。日本とドイツの例を見れば、やっぱり戦争かねぇ・・・と思うんですが、イギリスの例もあるし。ソ連についてもどのように解釈すべきか、悩んでおります。

ところで、「大国政治の悲劇」、前に出たやつを持っているんですが、アメリカ留学からの本の山は実家にあるため、今回参考にできませんでした。手元にあればサインしてもらったのに・・・無念なりけり。(←ミーハー根性丸出し)

 

References

References
1 ヒートテック分もカウントすると計5枚。あれです、サイボーグ004リスペクトです。
2 女性の皆様は分かってくださると思うが、女というものは好きな料理家で派閥ができるものなのです。会社では栗原はるみが人気です。私は有元葉子派。
3 「フランス人は服を10着しか持たない」って本
4 アメリカの大学でinternational relationsで学位とって、卒論書いた見栄。6年近く前に取った杵柄です。
5 別の言い方をすれば、ミアシャイマー教授の理論を中国の海洋政策に当てはめて、その理論の正しいことを実証(というのもなんですけど)してみた、って感じです。全文このブログに注釈込みでぶち混んでいるのでお暇な人は探してみてください。英語の拙さはご愛嬌ですよ。
6 英語の講演聞きながら日本語でメモするほど器用ではないので、全て英語のメモです。今見ると相当ミミズ文字で何書いてんだろう?と謎なものも・・・私は同時通訳とか翻訳者とか2つの言語を自在に跨げる人を尊敬するよ。
7 今は単にISっていうことが多いようですけど。ミアシャイマー教授は「アイシス」と言っていたので、この記事ではこの表記で。
8 攻撃的現実主義の理論からしても、ロシアもアメリカも中東に新しい「大国」はいらないですからね。
9 とまでは言われてない。でもダメダメ認定されていることは間違いない

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