Wunderkammerの世界

Twitterでもつぶやいた通り、佐藤優と読書について対談していた佐高信と勘違いして高山宏の本を借りたのが1週間ほど前。どうも名前が3文字同士で混ざったらしい。で、ヒトラーのあれとかこれとかをやっと読み終わったので、昨日から読み始めた。3章分ほど読んで、「これは佐藤優の対談相手じゃないな」と気がついた。さらに読み進めて「ははーん、これは松岡正剛や荒俣宏のお仲間だな」と。 [1]気がつくも何も、そう書いてあるんですけどね。

立花隆(この人も3文字)に手を染めた中学生の頃から、文武両道というか、兎に角、守備範囲の広い人に憧れがちな私は、大学の頃に美術だったか西洋史だったか、「Wunderkammer(驚異の部屋)」についてのレポート絡みで荒俣宏について調べたことがあり、これがきっかけで自分の目指す知の形が、専門分野に特化した縦型ではなく、分野横断の蜘蛛の巣型であることを認識し、それゆえ「浅くとも良いや。物事と物事の連繋が大事なのだ」と、せっせと糸を紡いでいる。もちろん、憧れの人たちのレベルほどには記憶力も知識も追いついていない。手で払えば簡単に崩れてしまう、文字通りの蜘蛛の巣。松岡正剛の輪に、荒俣宏の輪。高山宏の輪。そんな風にガイドを立てつつ連環を作っていけば、もう少しまともな形になるだろう。池田晶子はあの性格と内容なので、イメージ的には一番最後にやってきて、一番真ん中を陣取った感じかもね。この蜘蛛の巣をなんとか表現したいと思って始めたのがこのブログで、ブログ名はその気負いの表れだったりするのだ。で、今は単なる文章ではなく、文字通りの「蜘蛛の巣」を表現できないか考え中。そうするにはコーディングの技術が必要だと思うが、そんなに難しいものではないので、早いところ身に付けたい。

ちなみに、そういう意図もあって、読む本の内容は多少の偏りはあるけれども、節操なしを目指している。読んだ本は漫画や飛ばし読みしたものを除いて全てこのブログの「読んだ本」ページに記録しているが、実際に会社の人や家族にはどういう本を読んでいるのか全体像が見えないらしい。一度読んだ本リストを読み上げたことがあるが、ただ一人、私が本を読む理由を当てた人がおり、非常に驚いたことがある。お堅い職業の人なのでとても意外なのだが、芥川龍之介の河童語について熱く語るあたり、そっち系の素養?もある人なのかもしれない。

高山宏に戻ると、彼は助手時代に大学研究室書庫の目録をカードにまとめていた。それが、今の彼のベースになっていると言えるんだが、それについて読んで思い出すのが「丸写しの威力」。小学校5年生のときだったが、理科の自由研究の一環かなにかで、科学雑誌Newtonの木星とその衛星イオについての記事を丸写ししたことがある。ご丁寧に絵まで真似して描いた。おかげさまで未だにイオ・トーラスの仕組みを覚えていたりするので、丸写しというのは本当に効力があるんだろう。人生2度目の大掛かりな丸写しプロジェクトは、大学の頃、ウッドロー・ウィルソン・ライブラリーにインターン身分で通いつめ、ウィルソン書簡全集(the Papers of Woodrow Wilson)の中から日本に関わる部分をかたっぱしから書き留めたものだったりする。第6巻167ページから58巻の185ページまで。全部書き写したか、それとも時間切れで最後の方が抜けていたかは正直覚えていないんだけど [2] … Continue reading、100枚綴りのノートほぼ1冊全て使い切っている。こんな妙なノートを持っているのは世界広しとも私だけだと思うよ、さすがに。索引でJapanもしくはJapaneseで調べて、該当ページに付箋を片っ端から貼り、その後黙々とページ数やいつ書かれた手紙(書類)か、誰宛かをメモして、その中身をノートに写す。これを3ヶ月ほどかけて1巻ずつ進めていった。これはこれで妙に記憶に残るプロジェクトだったし、博物館の見学者お断りの上階でバンカーズライトを灯しながらひたすら書き写すのはとても楽しかった。せっかくなので、その時のノートをさらしておく。また何か丸写ししたいな・・・と高山宏の本を読んで思ったので、手頃なものを見つけよう。ロジェのシソーラスとか?さすがに量が多いかしらね。

References

References
1 気がつくも何も、そう書いてあるんですけどね。
2 多分網羅できていないと思う。彼の任期は1921年までなのに、ノートは1919年4月28日で終わっている。その間、国際社会で日本が話に上がらないとは考え難い。とはいえ、やりきった記憶もあるような・・・

Leave a Reply