「実は私たち崖っぷち?」と思い知らされるペレグリーノの「ダスト」

みょーにリアルなのが怖い!

さて、4日で一気に読んでしまったペレグリーノの「ダスト」。ネタバレ満載で申し訳ないが、人間が黒い埃(ダニ)に襲われ骨だけになるわ、吸血蝙蝠が薄闇の古い教会で人間に襲いかかるわ、狂牛病に感染しておかしくなるわ、ワシントンは「失敗の」核テロで吹っ飛びヒロシマのような状態になるわ、中国はどさくさに紛れて台湾や日本どころかオーストラリアやニュージーランドまで併合するわ、ラジオでデマを囃し立て人々を暴徒化させる男が出てくるわ、病に侵された一人の軍人によりシナトラの故郷に三十発の核ミサイルをお見舞いするわ・・・「思いついたこと全部ブッこみました(^_^)」と言わんばかりの厄災のオンパレードである。それもこれも、昆虫が地球から消えたせいであり、昆虫が消えた理由が太陽系の軌道と銀河系平面の関係が3000万年毎の生命絶滅の危機に備えるものだったというのが、話の前提にある。太陽系の軌道問題、この部分は科学的にはまだ仮説だろうが・・・

普通ならここで「いうて虫が消えるという前提は科学的に証明されたわけではないのだな。だから、そりゃ確かに人間は地球を汚染させたり、ある種の生物を絶滅させたりしているが、まだ大丈夫なのだな」と一安心できるのだと思う。が、私は全然できなかった。なぜか?作中で「国家間の熱核兵器を用いた(最初の?最初で最後の?)戦争」として扱われた印パ関係について、ちょうど読んでいる間にあれよあれよと悪化のニュースが流れてきたからである。作中では、昆虫がいなくなったことでインドの農業がやられ、まだ無事に見えたパキスタンとバングラディッシュを狙った紛争が予期なく核戦争に発展。アメリカもインド洋に派遣していた空母群が核機雷によって沈没して巻き込まれる・・・という流れ(だが、実際のところアメリカは国内がそれどころじゃなく、この核戦争に対しては積極的には関与していない)。現実には飢饉というよりは、領土紛争がきっかけで緊張が高まっているから、違うといえば違うのだが、お陰様で他の厄災も一気に身近に感じることができた。プリオン(狂牛病)?最近聞かないけれども撲滅したというわけでもなさそう。ラジオでデマを煽る?昔も今も変わらない。人間社会、実はちょっとしたことで一気に崩壊するのではないか?私は実は崖っぷちから飛び出ている薄いガラスの上にいるのではないか?こんな風に山手線乗っていて、大丈夫なんだろうか・・・?あぁ怖い!松岡正剛も千夜千冊エディションのほうに書き足していた。「世界にとって一番きわどい問題は、何と何とが「ぐる」なのか(「情報生命」P389)」、これがわからないから怖い。星なのか、虫なのか、はたまたバクテリアなのか?てかバクテリアって何だ!?一気に読めるので、660ページの重さを気にしない人は是非。「どうしたらいいのかわからんが、とりあえず、足元のアリさんを大事にしよう」と思うこと、うけおいである。

https://1000ya.isis.ne.jp/0402.html
因みにこの巻は生物学的知識がないとちょっと辛い。

Leave a Reply