若さ故の・・・?「八九六四」安田峰俊

Twitterでも呟いたけれども、アメリカ留学時代に周恩来についてレポートを書いた都合で、彼が死んだときのことまでそれなりに知っているのだが、それ以降の中国史に関してはあまり知らなかったりする。「天安門事件」は「それ以降の中国史」のなかで結構大きな事件だが、実は全然わかっていない。知っているのはあの写真と学生の運動だった・・・ということくらい。だいたい、89年ならば、私はしっかり生まれているし、そこそこ記憶があってもいい頃なんだが、覚えていない。なので、この本は私にとって「初天安門」である。

事件の概要もろくに調べずに、色々な背景をもった人へのインタビューで構成されている本書を読んだのだから、正直細かなことは何も言えない。それでも読み進めながら考えたことなどを羅列してみる。

日本の学生運動との関連

組織論的な部分で似てるな・・・と思った。正直東大紛争はよくわからないのだが、連合赤軍あたりに一時期凝っていた身としては、

  • 天安門事件後の動きになるとは言え、細かな思想の違い(という名の単なる人間関係)で分裂してしまい、統一された活動が出来ていない。というより、内紛に近い・・・
  • 盛り上がったのが学生だけ。社会人をあんまり巻き込めていない。
  • その後運動は廃れる。

あたりがそっくりだなぁ、と。日本の学生運動のほうが暴力的ではあったが、外部(政府)からの圧力は天安門事件の方が圧倒的に上。この辺はちょうど真逆になっていて興味深い。やはり国の体制の違いか?

中国の身分制について

「身分制」というのは正しくないのかもしれないが、「士庶の別」が存在し、当人たちもそれを意識していたというのが学び。中国の事情は詳しくないが、日本と同じように当時に比べて大学進学率も増えているだろうし、そうなると「自分たちは特別」感は減っているのではなかろうか?でも、留学とかにも熱心だし、そもそも人口の規模や貧富の差が全然違う(日本に比べて貧困層が多い?)ので、今でもその意識は強いのか?まぁ、北京大学の学生とかなら不思議じゃないですけど。

大人になってハマると危ない

頭のよい、そこそこ身分の高い人が学生のうちにハマってることに、大人になってハマった非知識人は、知識人ではないが故に、コネもなく、賢く身を守ることもできず、当局に弾圧されてしまうというのが、絵に描いたようにはっきり理解できた。知識人たちは大人になると、現実との折り合いをつけないと生活できないことに気がつくし、実際そうやって過ごしていって保守的な考え方になっていくのに対して、非知識人は大人になって初めて(インターネットで)過激な意見を目にして、そこでおそらく当人にとっても初めてに近い承認欲求を満たそうとしてしまう。それゆえに危険なのだ、というのは、日本でも同じではないか?

今の香港との繋がり

去年出た本だしメインは天安門事件についてなので、この本を読んだところで完璧に現在の香港の混乱を理解できるわけではないが、香港についての部分で多少考えるヒントになった。ややこしいが「本土派」は中国本土と一緒になりたいんじゃなくて真逆・・・とかも驚き。不勉強で雨傘革命についてもろくに知らないので偉そうに言えないが、やはり習近平の影響が大きいのだろうなと思う。そこそこの締め付けならば反対運動もそこそこで済むはずなのだが、がっちりやるから、デモ側もやり返す。ただ、無駄に暴力的になっている部分はデモ側にもあるだろうし、難しいところ。体制側もデモ側もまずいほうへ転がり込んでいるような気がしなくもない。また、直近2名が撃たれているが、それが両方とも(いたいけな小さな、とは言い難いが)子供という点で国際的な非難や動きもあるだろうし・・・うむむ。詳しくないことについて、現在起こっていることを予測しようもないので、勉強しつつニュースを追っていきたいと思います。

最後になるが、学生運動っていうのは、「学生」とつく通り、「若くて」「時間があって(暇で)」「社会の荒波にはまだのまれておらず」「でもなんか不満を抱えている」人がするもんなのだ。知識人とは言え、社会に出ていないから理想論だし、無駄にまっすぐで権謀策略も使えない。統一した見解をグループで持つこともできず、内部分裂しがち。若さ故の過ちだった・・・と考える人が多いのも納得である。

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