プーチンに狙われたウクライナ

久々に国際関係本を読んだので、ささっとまとめ。

ウクライナの民族問題

一言で言えば、あの辺は民族が入り組みすぎなんである。「蛮行のヨーロッパ」でも取り上げられていたが、多少の川はあるものの、だだっ広い平野にいろんな民族的アイデンティティーを持った集団が過去のあれやらこれやら(後述)で、どの集団もそれなりに納得感のある被害者意識を持って入り組んで住んでいるから、ちょっとのきっかけで収拾がつかなくなってしまう。海とか砂漠とか、せめてなかなか越えるのが難しい山で区切られていたら、こうはならなかったに違いない。また、ウクライナ問題なのに、ウクライナ単体で話が済まないのも特徴的。これは国際関係的にというのではなく、問題の地域に住んでいた人が元々は別の地域に住んでいたり、別の地域に住んだりということについてである。なぜ、ロシアの西にあるウクライナの話をしているのに、ロシアの東にあるサハリンが出てくるのか?そこにウクライナ軍の脱走兵が親戚を頼って住んでいるからである。日本に住んでいると目がくらみそうな大移動だ。

スターリンの悪しき遺物

このロシアやウクライナのあっちやこっちやの民族大移動は、スターリンの影響下に今もあるゆえ、と言えるだろう。もちろんスターリンだけが戦犯なわけではない。帝政ロシア時代からの問題もあっただろう。しかし、ウクライナにおける大飢饉、その後その地域へのロシア人の入植、ドイツの侵攻、そしてソ連が支配権を取り戻すとともに少数民族を対独協力者などとして中央アジアや極東に送ったこと。1000年くらい時間が経っていればまだしも、これらは100年も経っていない記憶として人々の中に残っている。ソ連崩壊とともに、やっとこさ祖先の土地に戻ってきたというに、また自分たちを追い出したやつの後釜(の国)に支配されちゃ、抵抗もしますて。

ロシアの野望と欧米の反応

国際関係論や地政学では必ず言われるが、ロシアはナポレオンにヒトラーと2度の侵攻を受け、東欧を緩衝地帯としておこうとしている、という見方。これは「ルースキー・ミール(ロシア的世界)」というらしい。可能であればウクライナ全体を緩衝地帯化しちゃいたいところだが、それはさすがに難しいのでとりあえずウクライナ東部を押さえたのだろう。と考えると、バルト三国なんかも狙われたりするのかもしれない。もう、NATO入っちゃっているから流石にないかな?(北のほうはもう無理だから、NATOの影響の薄い南の方を狙ったとも言える。ジョージアとかも。)

同時に考えなければいけないのは、ウクライナがソ連崩壊時に手元に残った核を諦めた代わりに欧米から安全を担保してもらったはずなのに、それが今回果たされていないという点。プーチンはこのウクライナ騒動で核の準備も辞さなかったということはすでに公表されており、であれば結局「核を持たない国は核を持つ国に蹂躙されても助けてもらえない。」というメッセージを世界中にばらまいてしまったのではないか?多分、それに一番強く反応したのが北朝鮮なのだと思う。

因みにこの本の一番のゾゾゾ・・・ポイントは、シリアへの介入の部分。ロシアがシリアに介入→シリア内戦激化→シリア難民増加→西欧への難民増加→内政混乱→ウクライナどころじゃない!というこのシナリオよ・・・もしくは、「西欧への難民増加」から→西欧における人種差別活動激化→ウクライナのファシスト(愛国主義者など)との結びつけ→ウクライナ在住のロシア系を保護せねば!という論法なのかもしれないが。いずれにしても狡猾だ。

だいたいこんな感じです。本自体はもっと現地での生活や戦場の様子、タタールやマレーシア航空機撃墜事件などについて詳しく、比較的時系列にまとまっているので非常に読みやすい。ウクライナ騒動について、ざっと頭に入れたい人にオススメです。さて、最近ウクライナ情勢が全くニュースにならないのは落ち着いているからなのか、それとも報道するまでもない日常になってしまったからなのか。どっちなのでしょうね。

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