クーデターは1度成功すると歴史は繰り返すのか?をカウントしてみた。

ここから調査してみました。資料はエドワード・ルトワック「クーデター入門」の巻末補遺の表C・2 クーデターの成功・失敗リスト(1945-2010年)。私は統計というか資料の見方のプロではないので、あまりややこしいことはせずに、まずは単純に成功しかしていない国と失敗しかしていない国を羅列してみます。成功続き、失敗続きの場合はその回数も書いておきます。(何も書いていない場合は1回のみの成功・失敗。)ちなみに、元の資料にはクーデターの実行主体も書いてあって、たまに「それはクーデターなのかな?」と思わなくもないものも入っているんですが、とりあえずはこの資料を元にカウントしますので悪しからず。多分真面目に探せば、どっかによりわかりやすい最新のデータが転がっていると思います。クーデター回数とその成功率のリスト。見つけた人は興味あるので教えてください…

クーデター成功のみ

  • ブルキナファソ(5回)
  • ルワンダ(2回)
  • サントメ・プリンシペ
  • マレーシア
  • ソロモン諸島
  • キプロス
  • チェコ
  • ポーランド
  • ルーマニア
  • スロバキア
  • ブラジル(4回)
  • コロンビア(2回)
  • ウルグアイ(2回)
  • オマーン
  • チュニジア
  • ネパール(2回)

クーデター失敗のみ

  • アンゴラ
  • カメルーン
  • ガボン
  • ケニア
  • ザンビア(3回)
  • 日本
  • 北朝鮮(2回)
  • パプアニューギニア
  • 東ティモール(2回)
  • バヌアツ
  • アルバニア
  • ドミニカ
  • トリニダード・トバゴ(2回)
  • バーレーン
  • レバノン(2回)
  • モロッコ(2回)
  • アラブ首長国連邦(2回)
  • スリランカ(2回)

成功体験のみの国は16カ国、うち複数成功しているのは6カ国(37.5%)。失敗体験のみの国は18カ国、うち複数失敗しているのは8カ国なので44.4%。「あ、それもクーデターカウントですか…」みたいなのも個人的な感覚では結構入っているし、これじゃあいまいちわからない。ということで、今度は10回以上クーデターが起きている国のそれぞれの成功率を見てみます。(カッコの中は 成功数/総数 割合(小数点第2位で四捨五入))

アフリカ

  • ベニン(5/14 35.7%)
  • ブルンジ(5/12 41.7%)
  • 中央アフリカ(5/10 50%
  • チャド(3/15 20%)
  • コモロ(5/18 27.8%)
  • ガーナ(5/10 50%
  • シエラレオネ(5/10 50%
  • スーダン(4/14 28.6%)
  • トーゴ(4/12 33.3%)

東アジアと太平洋

  • フィリピン(1/11 9.1%)
  • タイ(11/16 68.8%
  • カンボジア(4/10 40%)

ラテンアメリカとカリブ海

  • アルゼンチン(8/17 47.1%)
  • ボリビア(9/15 60%
  • エクアドル(8/11 72.7%
  • グアテマラ(5/13 38.5%)
  • ハイチ(9/15 60%
  • ペルー(6/10 60%
  • ベネズエラ(3/11 27.3%)

中東と北アフリカ

  • イラク(4/11 36.4%)
  • シリア(11/14 78.6%

こうやってみると、アフリカ諸国は数は多いものの成功率はあまり良くない。南米は数も多けりゃ成功率も高い。中東&北アフリカのイスラム圏は意外と少ない。アジアも実は10回に届かないけれども5回以上の国が満遍なく広がっている状態で、最初は東南アジアにクーデター頻発地域が固まってるのかなと思ったのですが、実はアジアには中国がどどーんと存在しているため、そもそもその他の国の数が少ないのでした。中央アジアは集計期間の半分以上ソ連だったしね…と考えると、やっぱりクーデターが多い地域といえそう。

そして肝心の「クーデターの成功体験ゆえに歴史は繰り返すのではないか?」という点について、最初に申し上げた通り統計が出来ない故に、私がみたところの印象になりますが、10回以上クーデターが起きている国はほとんどの国で1回目か2回目の少なくともどちらかで成功しています。例外はアルゼンチンのみ。 [1]なおアルゼンチンはその後3、4回目で連続成功している。ので、初期の成功体験により、クーデターという選択肢が比較的容易に選ばれるのではないか?とは言えそうです。 [2] … Continue reading

ついでに資料で目についたことを何点か。(と言うより、諦めの悪い国の羅列)

  • 2〜4回失敗続きの後に成功するパターンがそこそこ多いのですが(数打ちゃあたると言うことだろうか?)、アフリカは最近になるほど失敗続きの国もある。チャドは8回連続失敗。ベニンは6回。その後成功した記録もない。 [3]2010年までの記録を利用しているので、その後10年間で成功しているのかもしれない。トーゴは6連続失敗後、1回成功。
  • 連続クーデター失敗の最多記録はフィリピン。10連続。成功も最初の1回のみ。いい加減諦めた方がいいと思う。
  • 南米は割と手堅く成功体験を繰り返しているのだが、ベネズエラは7連続失敗。2010年以降の記録がないものの、一昨年にもクーデター鎮圧したとかニュースになってましたね。

もう、集計する気もわかないのか、北米や西ヨーロッパはリストに国名さえ上がっていないのですが [4]ポルトガルのみ6回クーデター起こってて、バッチリ載ってます。、ルトワックによると

  1. 経済の後進性
  2. 政治的独立(その国の国内政治における外国の影響が比較的少ないこと)
  3. 有機的統一(政治的中心があること)

の3つがクーデターの条件になるので、まぁまず起こらんわいってことでしょうね。逆に失敗続きでもクーデターが続く国というのは、国内政治の状況の悪さゆえでしょうから、一概にクーデター連続失敗してよかったね!とも言えないわけです。新型コロナウィルスの影響により、世界的に経済状況が悪くなっていくなかで、今後クーデターが増えるのかどうか、気になるところです。

以上、私の資料読み解き能力の低さ故、いまいちよくわからん結果ではありましたが、「10回以上繰り返している国はほとんど初回か2回目にはクーデター成功体験を持っている」というまとめで終えようと思います。お粗末様でした。


追記:よくよく考えると「クーデターに記憶」だけでも、繰り返す原因になるのかもしれない。まぁ、失敗後の首謀者の扱い方や政治状況によっても違うのだろうけど。なので、まぁ、これはあくまで数字の上の話ですね。やっぱりちゃんと状況を個別に分析しないと、「クーデター経験がある国の方が繰り返しやすい」とは言えないな。

References

References
1 なおアルゼンチンはその後3、4回目で連続成功している。
2 ただし、全てのクーデターの状況を調べたわけではないので、最初の成功が本当に「国民にクーデター成功として認識されているのか?」は正直疑問である旨、記しておきます。
3 2010年までの記録を利用しているので、その後10年間で成功しているのかもしれない。
4 ポルトガルのみ6回クーデター起こってて、バッチリ載ってます。

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