制服でごはんを食べに出て何が悪い

「消防車でうどん店に立ち寄った」 消防団員への指導に「世知辛い世の中」という声相次ぐ

消防団員(消防士ではなく、消防団員)が、次の予定もあるからと消防車に乗り、制服のまま昼食をとったとクレームになり、それが新聞記事にもなったとか。正直、線引きは難しいのだと思う。「説明会から次の場所への移動中」という事情を知らず、「飲食店の外に止まっている消防車」だけを切り取ってみれば、「消防車で乗り付けた」ように捉える人がいるのは当たり前だし、そもそもその説明会とやらに消防車で行く必要が本当にあったかどうかによっても違う。さらに言えば、消防車の必要はなかったけれど、では消防車以外に移動用の公用車なく、公務に自家用車を出すのがあるべき姿なのか?日曜日に朝から説明会に参加しているのに・・・エトセトラ、エトセトラ。結局ものすごく詳細まで知らずして、「是か非か」なんてわからないものなのだ。

と、車の使用 [1]特に消防車だなんて高価で特殊で、公道を走っているだけで明らかに道を譲りたくなるような車の場合については、結構懐疑的スタンスというか、「まぁ、クレームは言わないにしろ、その光景だけいきなり見たらびっくりしそう」と思う。が、制服でごはんを食べる。この点に関しては何が悪いのかさっぱりわからない。 [2] … Continue reading

もちろん、制服ったって、空自のパイロットがフル装備でうどんすすってたらそれはそれでびっくりするし、「びっくりさせないでよ、もー」くらいの文句は言いたくなるかもしれない。 [3]でも絶対に言わないで、密かに見惚れていると思う。私は。今回の団員さんたちがどのような格好だかは不明だが、つなぎの作業着くらいなら、全然許容範囲でしょ。「あら、消防の人だわ。」この程度だろう。警察官でもまぁ、「珍しいもん見たわー。忙しいのかな?」くらいで、もし自衛官が迷彩服なり制服なりで、近所に駐屯地もないのに、うどんすすっているのに出くわしたら、流石に一瞬固まった後、「・・・いい食べっぷりね」と観察して終わりそう。いずれにしろ「公僕のくせに制服でごはんを食べるだなんてケシカラン!!」とはならない。だいたい、消防の人とか自衛官とかには、しっかり食べてもらって、いざって時に馬力を出して助けて欲しい。いざって時はないに越したことはないけれど、そのために訓練をしていて、そのためにお腹がすくなら、制服姿が何です。しっかりお食べなさいな。

とここまで書いて思い出したのが、例によって池田晶子女史の文章。あった、あったで引っ張り出してきたのは「考える日々 全編」の455ページ目。

 消防士が危機に対処すること、機敏にして平等で、しかも人命を救助するために命懸けである。命懸けということなら、自衛隊員もそうだけれども、頻度が違う。われわれは、自衛隊員が命懸けでその任務を遂行するところを、じつはまだ見たことがないのである。

その晩、ぬる目のお風呂で興奮を鎮めながら思ったのは、「消防士は最も清廉な公務員である」。

「公務員」というものの、使命と理想の原形があそこにはある。清く正しく逞しい。だらけて腐れた警察関係者たちは、自身の行いを深く恥じ、消防士の精神を見倣うがよろし。

ずいぶんな持ち上げようだった。「俺の家が燃えたらひとつよろしく」と賄賂を渡すようなもんではないから、というのがその理由らしい。ま、そりゃそうだ。正直、社会というか、われわれの生活を命懸けで守ることを仕事にしている人たちを無条件に讃えることは、警察の汚職やら自衛官の淫行事件なんかもあるし、できない。でも、そうでない人ほとんどの人たちへの敬意は忘れないでおきたいと思う。ステータスシンボルではなく、公僕としての誇りとして、制服を着て、正々堂々うどんを食べてもらえるような社会を目指していきたいものですね。

 

 

References

References
1 特に消防車だなんて高価で特殊で、公道を走っているだけで明らかに道を譲りたくなるような車の場合
2 一応確認しておきますと、今回のニュース&市民からのクレームは主に「消防車」に対してであり、制服の方ではないです。ネット上の反応はそっちも含めているようですが。
3 でも絶対に言わないで、密かに見惚れていると思う。私は。

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