前提知識がないとさっぱりな「私の昭和の戦争」

去年後半から二・二六事件経由で昭和史に傾倒しているわけだけど、今年に入っては半藤一利フィーバーのような様相です。昭和史といえば大御所・半藤一利ということで、日本史は高校での勉強が最後 [1]正確には大学でも多少歴史を勉強してたが、昭和史に特化はしてなかった。な人間には、座談会式とか、難易度低めの本が揃っていて非常にありがたい。同じ人の本を読み続ける利点は、何度も似たことが出てくる点で、嫌でも覚える(ような気がする)点にあり、逆に欠点としては、その人の思想に知らず知らず取り込まれてしまう、いわゆるクリティカルシンキングしながら読まないと鵜呑みにしてしまう、ということでしょうか。そんなこんなで、今年に入って座談会式のを3冊読み、それからこの後も宮部みゆき、佐藤優、保坂正康それぞれと語り合っている本が合計3冊控えていたりするのです。

今回ご紹介するのはその中で「私の昭和の戦争」というちょっと古い本。あとがきによると元々89年に出た本を再編したものらしい。で、89年に出た本自体もいろんな雑誌上の対談をまとめたもので、一番古い雑誌の掲載が70年のもの。89年から再編集された2007年の間に、対談なさった方は全員お亡くなりになったとのこと。89年だと私はとっくの昔に生まれていることを考えると、あの戦争は近いような遠いような不思議な距離感を感じてしまう。

肝心の内容はといえば、当時の参謀本部作戦課員だとか第◯◯方面軍時作戦主任参謀だとかの対談が多く、基礎知識がない身としてはチンプンカンプンなことも多かったです。例えば、ノモンハン。私が知っているのはあくまで日本とソ連がぶつかって、日本側に死傷者がだいぶでて、ソ連の戦車は強かったらしい・・・というレベルなのに、その上空1万メートルな会話を繰り広げていらっしゃる。わからんわ!!もちろん、そこまで作戦とか人事とか細かいことが出てこない対談もあり、大岡昇平&吉田満との作家対談や満州引揚者との対談は、当時の日本人の感覚が感じられて、おもしろかった。満州は飛行機で毛皮や洋服作りにいくとこだったらしいよ・・・平成の世の日本国内でも「ちょっと買い物しに新潟から東京にに飛行機で」って人はあんまりいないと思うんだけど、新聞社勤めはそんなに儲かっていたのだろうか。

まぁ、全般的に昭和史について読んでいて思うのが、「ダメダメだと思っていた部分(例えば陸軍)が全てダメなわけでもなく、良いと思っていたもの(例えば海軍)もダメダメな部分があるもんだなぁ」という、極めて当たり前なこと。でも、こういうことに気がつくには、今回のように集中して取り組まないといけなかったわけで、それまでの私の認識は、今までのどこかで読んだり学んだりしたものから作り上げられているわけなのだから、やっぱりいつでも批判的に読むというのは必要なんでしょうね。

とりあえず、今まで読んだ半藤一利本の中では一番昭和の空気が強いと思いました。平成人にはわからない空気、違和感を一番感じられる本です。一番おもしろかったのは駆逐艦雪風の歴代4人の艦長の座談会の章。海の男は荒くれ者・・・って今の海自からは想像もつかないや。

 

References

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1 正確には大学でも多少歴史を勉強してたが、昭和史に特化はしてなかった。

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