佐藤優おすすめ本よりずっと面白かった本

こちらの本、昨日読み終わったのですが、とっても面白かったです。基本的には筆者が陸大卒業後、お父上(おなじく軍人)や将軍たちから薫陶をうけた話、大本営参謀になり情報に関わり始めてから戦場で学んだこと、山下兵団の話、そして戦後の自衛隊勤務のときの話・・・と、ほぼ時系列に語られてるんですが、貫いている主張は一つ。「情報大事!」本当にこれ。もうひとつ言えば、戦場における高度の重要性。こちらは父親がもともと航空系だったのもあるかもしれない。その他印象に残った点は以下の通り。

  • アメリカはどうも大正の頃から日本との戦争を視野に入れて、太平洋での戦いを研究、準備していた。 [1] … Continue reading
  • 日本は大陸での戦い方に慣れており、そこでの敵は精神論で勝てたが、アメリカの「鉄量」相手には同じようにいかないことを、特に戦場から離れた大本営が理解していなかった。
  • 日本は太平洋上で文字通り「点(島)」を抑えたが、それは攻者が圧倒的に有利になることを、理解していなかった。※攻める場所を選択できるため。
  • 同じ島内でも各陣地がジャングル等で「点」になっていた。
  • アメリカの戦法は「1制空権の確保。これは滑走路のある島を飛び飛びにおさえていった。2侵攻予定地の補給を断つ。(フィリピンの場合は台湾など)3侵略予定地近くの小島を占拠4艦砲射撃&航空爆撃による事前砲撃5上陸」という手順。これに対して日本軍は1制空権の重要性が最後までわかっていなかった。
  • 逆にアメリカ軍は山が苦手。なので、山にこもって持久戦を仕掛けた戦いは最終的に負けたとはいえ、長らく持ちこたえた。(硫黄島、ペリリューなど)
  • フィリピンは島の大きさ的にも艦砲射撃が島内部には届かず、木々も濃く、持久戦にもってこいの環境であったのに、台湾沖空戦の誤った戦果を鵜呑みにした大本営の指示で、レイテに戦力を割かざるを得なかった。
  • B29のコールサインを調査して防空に生かしていたが、そのなかでホノルル出発後ワシントン向けに長文電報を発信したり、新しいコールサイン(それ以前は飛ばされていた600番台)を利用していたり、日本近海まできてはテニアンに戻るといったことを繰り返したり・・・という部隊を捕捉したが、その部隊と、原爆を最後まで結びつけることができなかった。もし在米諜報網が健在していたら(=在米日本人が強制収容所に収容されていなかったら)、事前に判明できただろう。

結局、「より高い地点を握ったものが勝つ」という戦場の教えを日本軍は理解できておらず、アメリカ軍が高さも込みの3次元的空間の見方をしていたのに対し、日本軍は地図の平面上でしか考えられていなかった、そのため「高さを支配するのに必要な点」をアメリカ軍は選んで侵攻したが、日本軍は誇大戦果報告もあり、誤った選択をし続けた・・・と言うことでしょうか。

また、情報観点からすれば、複数筋の情報が交差したところからしか本当の情報は出て来ない、一つの出処だけから情報を判断するのは危険だ、というのも、この本からの教訓だと思います。Amazonの評価など見ていると、「内容に誤りあり。信用すべからず!」と詳細に指摘しているものもありますが、それこそ情報の扱いの大原則の繰り返しで、我々は「2線3線の情報筋(この場合は別の本)と比較考慮して、判断せねばならない」ということ。本書の意図がその大原則を伝えることを考えれば、内容の正誤は兎も角、一読の価値はあるかと。原則だからこそ、佐藤優勧めるCIAの本↓なんかより、ずっと役にたつと思います。

 

References

References
1 これは、私の留学時代、ウィルソン大統領の書簡で日本がらみの部分をほぼ全てさらったときにも「アメリカは意外と早くから対日戦争を考えていたな」と驚いた記憶があるので、間違いなさそう。

Leave a Reply