書評らしい書評 山内昌之「歴史家の書見台」

THE 書評

ここ5年くらい「本についての本」は佐藤優か松岡正剛しか読んでおらず、しかもここ数ヶ月は千夜千冊の比重が高まっている中で本書を読んだところ、「なんとまぁ、書評らしい書評だろうか」と思ってしまった。使っている語彙や言い回しからして、お堅い書評そのものなのである。

(前略)これまでにない視角と着想が魅力的な書物になっている。イラク人の深層心理の一端を伺える本ともいえよう。

(P65)

<分かりにくい国>を多面的に解剖した現実的な帝国論として必読の書といってよい。

(P90)

訳語が気にならなくもない。オーランド諸島をアーランドとするのはともかく…(中略)…この研究領域は、日本でも齋藤孝氏や百瀬宏氏以来すぐれた成果をあげている分野である。翻訳にあたっては、日本人の研究成果と地名人名の表記を是非参照してほしいものだ。

(P141)

万事がこの調子。だんだん読むのに疲れてしまったぞ。

ピックアップされている本も、どうも食指が動かない。私の趣味ではない本が多いのか、それともお堅い紹介に気圧されたのか。100冊弱紹介されていたが、読みたいと思ったのは5〜6冊だけであった。例えば、子ブッシュによるイラク戦争についてはドンピシャ世代なので [1]ちょうど大学で勉強している頃だったまだとっつきやすいのだが、その前の湾岸戦争やイラン・イラク戦争になると、もう記憶がない。記憶がないから、とっつきにくい。サダム・フセイン時代のイラクにおける日本人拘束事件については、そもそも知らなかったので、そういうのは興味深いと思えるのだが・・・「もうちょっと気楽な本を選んでくれればいいのに」と思うが、そもそもが新聞書評のために書かれた文章なのだからしょうがないのか。

というか、新聞の書評ももっと気楽に読める内容にしてくれれば、本の売り上げも上がるだろうに!最近は本を読まない人が増えたなど言うが、「難しそうな本を読む」ことがステータスでもなんでもなくなった現在では、「難しいけれども、いかに面白いか」をきっちり伝わる言い方で表現すべきだと思う。お堅い書評は正直つまらない。難しそうな本を難しそうに紹介されたって、そんなの、誰も読みたくないでしょ?

References

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1 ちょうど大学で勉強している頃だった

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