失われた戦士文化?:ルトワック「戦争にチャンスを与えよ」より

ルトワックの「戦争にチャンスを与えよ」というその表題の議論についてはちょっと前に書いたのですが、今回はこの「戦争にチャンスを与えよ」章の次に読者がざわついたと思われる第8章「戦争から見たヨーロッパ 「戦士の文化」の喪失と人口減少」について。しかし、確実にざわついているとは思うんですが、意外とAmazonでもその点について触れている感想少ないのよね。みんな1章と2章が強烈すぎて、感想書く時そこまでたどり着けないのかな?(私も前回いけなかった。)それともジェンダー問題になるから避けたのかな?まぁ、どっちでもいいですが。

んで、「生命の法則」すなわち「男は戦いを好み、女は戦士を好む」、ヨーロッパにおけるこの源流はホロメスにあり、それを失くした今のヨーロッパは少子化を辿っている・・・ということなんですが、ぶっちゃけ私は今のところ文字通り「戦士を好む女」なので、何も言えないんですね。はい、戦士は大好物です。だってかっこいいんだもーん!と惚気てもしょうがないので、もう少し真面目に考えますと、確かにアメリカはマッチョな男に敬意を示す文化が根付いている。社会復帰後の問題を抱えているとはいえ、階級に関わらず軍人に猛烈な敬意を表しているし、実際トランプが大統領選挙中にイラク戦争で命を落としたイスラム教徒の兵士の両親を侮辱した時は、(あのトランプが)弁明に回ったほど。退役軍人が支持基盤の共和党としては致命的だったのだ。確かに思い返すと、私の留学時代も [1]ブッシュ大統領在任末期「戦争を決めた政府の首脳はクソだが、兵士に罪はなし!」という風潮だった。全般的にアメリカでは軍人の地位が高いんである。 [2] … Continue reading

残念ながら私はヨーロッパに行ったことがあるようでないので、ヨーロッパ社会の雰囲気は知らない。正直なところ、アメリカは自らの国が戦場になった経験が(真珠湾と同時多発テロとか単発的なのを除いて)独立戦争と南北戦争だけで、特に2度目の大戦でヨーロッパが経験したような、国民の社会そのものが戦争に大規模に巻き込まれた経験がないというのが、大きいように思う。端的に言えば「ヨーロッパは戦争に疲れてしまった。アメリカはまだそこまでではない。」ということか。同じように日本も戦争に疲れてしまった社会と言えそうですね。疲れちゃった社会に「もう一度元気を取り戻せ!」と言っても、多分どうにもならない。

社会の元気さは若い世代が担っていて、その若い世代を産むのはどうやっても女性で・・・と考えると、ここからは生物学の話になってしまう。すなわち、メスが好むオスの要因はなんぞや?生命力か、社会的地位か、知性か。何れにしても複雑怪奇な人間社会、生命力=強さだけで社会的地位が上がるわけでもなし、非戦士文化では知性で勝負できるのかもしれない。そして、疲れちゃった原因を覚えている世代がいなくなった未来、ヨーロッパもまた戦士的になるのかもしれない。 [3] … Continue reading

ところで、この男女問題にフォーカスしているかと思われる章、実はとても大事なことが書いてある。それはズバリ、ロシアについて。ルトワックがあげるロシアの特徴は以下の3つ。

  • 戦略は上手だが、それ以外は全て下手だ。
  • 経済をまるで分かっていない。
  • 大きな規模で考えることができる。

プーチンは5年の間に南オセチア、アブハジア、クリミア半島の領土をロシアに組み込んでいる上、帝国として維持している。それこそ、すぐ隣で何もできなかったヨーロッパの弱体化を示すものなのかもしれない。ロシアが戦士文化なのかどうかルトワックは触れていないが、ロシアを分析した部分として短いながら注目に価する・・・んだけど、なんせその前後が「男は戦いを好み、女は戦士を好む」だから、影が薄い。皆さん是非とも注目して読んでください。

ルトワックの「戦争にチャンスを与えよ」

 

References

References
1 ブッシュ大統領在任末期
2 これは日本からアメリカに出張へ行った迷彩服の男も言っていたので、間違いない。迷彩服着てwalmartへ行ったんだけど、みんな優しかった。レジ譲ってもらった。子供も優しかった・・・とのこと。
3 なお、個人的に少子化の原因は、男の絶対的弱体化ではなく、女の強大化(すなわち、男の相対的弱体化)だと思ってます。自分でなんでもできるのに、なんで男の言うこと聞かなきゃいけないんですかね?

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